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家族とは何か

2017年05月11日

爽やかというより、いささか暑い一日でした。

さて、GW期間中のぐうたら読書の続きで、また河合隼雄先生のものを読んでいました。このところ家というものを考えることが多かったものですから…。

「日本は母性原理優位の社会だ」ということは既に広く知られていることだと思いますが、母性原理と父性原理については何度学んでも学び足りないような難しさがありますね。

今回手にしたのは2004年の『父親の力 母親の力』。副題は、「イエ」を出て「家」に帰る、となっています。亡くなる数年前の著作で『家族関係を考える』よりもっと実践的で、各方面の臨床心理士からの質問に答える形式を取っています。そのためかやや散漫な印象でしたが、二つ合わせて読むとより理解が深まると思います。

手っ取り早く乱暴に言うと、日本は敗戦後、欧米に習った核家族と個人主義が急速に広まっていきましたが、それが形だけの個人主義であることからいろいろな歪みが生じています。個人主義というのは一神教に基づく徹底的な父性原理に基づいたものです。

父親は仕事や会社に縛られ、家事や子育てのほとんどが母親に委ねられ、父親の欠如が現代の様々な家族問題を引き起こしている要因なのだと過去盛んに言われていましたが、そもそも日本に父性などは存在しない。家父長制に基づく強権的な父親なども、あれは父性などではなく、あくまでもイエを守る母性社会の担い手に過ぎない。

この父性・母性ということについては、今の日本こそ、もっとしっかりと押さえておくべき重要な事柄のように思います。

父性というのは、世間の目を気にしたり長いものに巻かれろ的なのとは全く異なり、個人の判断によって主張し動いていくような力なのです。人を能力などによって裁断していく面もあります。一方、母性というものは、集団の調和を重んじるという長所がある反面、集団から外れる者を厭い、あらゆるものを吞み込んでしまうような短所があるのです。

父性と母性のバランスが、人が生きていく環境には必要なわけです。では、この中途半端な個人主義の時代を生きる私たち家族は、一体どうしたらいいのか。それは日頃から夫婦間、親子間で対話をする能力を磨いていくこと。そして時に衝突を恐れずに、実存的対決をはかれるようにすることだと説いています。実存的対決というと小難しいですが、魂と魂の本音のぶつかりあいとでもいいましょうか…。あとは良かったら読んで考えてみてくださいね。

表紙はパウル・クレーの『母と子』

 


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