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ブログ 心's LOOM

記憶と回想

2025年10月16日

久しぶりに劇場公開中の日本映画を観ました。

石川慶監督の『遠い山なみの光』です。ちょっとしたタスクだったので観たのですが、その前に原作の小説を読んでいました。カズオ・イシグロのデビュー作『 A PALE VIEW OF HILLS (遠い山なみの光)』(1982)です。最初の邦題は『女たちの遠い夏』です。当時20代後半の男性が書いたものというのが驚きです。

1980年代のイギリスと原爆が投下された後の急速に復興が進みつつある1950年代の長崎を舞台にしています。「夢(夜みる夢)と記憶の回想と語り」という観点から小説も映画も堪能しました。映画は小説を大胆に解釈したものですが、戦後を生きる女たちのもがきや母と娘の関係を軸に描いています。

小説は何かが起きるのではないか、既に起きているのではないか、という不気味さ、恐ろしさが通奏低音となっていますが、全体の印象としては正に「pale、淡い」感じ。遠くから山なみ、町並みを見下ろすような、回想の物語です。

 

 

 

 

 


目から鱗の言葉1:「夫婦関係の質」

2025年09月28日

この頃よく、一番教えを乞うた精神科医の先生の言葉をよく思い出します。どなたにも為に成ると思われるので、これはというものを時折ここにあげようかと思います。

そのなかの一つ、最初に頭をガツンと殴られたみたいに衝撃を受けたのは、「夫婦ってなればいいってものじゃなくて、<関係性の質>こそ問われるものでしょう?」というものです。当時30そこそこの私は、関係性の質などというものを全く考えたことがありませんでしたし、身近な大人たちも<質>というものを考えていそうな人は皆無でした。

これは別に結婚やパートナーの有無に関わらず、自分の両親や祖父母の関係性を見返すうえでもとても有益ではないでしょうか。私たちは上の世代の関係性の影響を確実に受けます。

最近読んだ小説のなかに、1950年前後の夫婦の次のようなやりとりがありました。
専業主婦の妻が夜帰宅した夫の仕事上の会議の成功を喜んでいたら、「そんなところに突っ立っていないで、はやくお茶くらい入れたらどうだ」と、夫が命じているかのような場面です。行間から察するに、妻は慌ててお茶を入れたのでしょう。

こういう夫婦をどう思いますか。夫唱婦随の美しい在り方でしょうか。

この夫は仕事は優秀で、別に暴君ではありません。きっと本人は妻を愛していると思っているはずだし、そう尋ねられれば首肯すると推測できます。ただ自分は妻より偉いと思っていることは言動から明らかで、イラついて自分がこぼした飲み物を拭きもしない。

50年前後の若夫婦といえば私の祖父母ぐらいの年齢です。当時はそれが当たり前だったのでしょう。女性も女の領分と粛々と従っていたはずです。でも時代は世界単位で確実に変化しています。もはやこの小説のような夫は恐竜並みの生物であるとは思いますが…。因みに小説の夫は子は鎹とはならずに離婚されています。

 

朝焼け


目から鱗の言葉1

2025年09月26日

論文を書いていたりしたら、秋分の日もすっかり過ぎてしまいました。
今日は暑いものの、朝晩はだいぶ秋の気配を感じられるようになりましたね。先日は薄っすらと鱗雲が出ていて嬉しくなりました。

今年の夏はいかがでしたか?
猛暑を通り越した酷暑と多湿は、それだけで体は疲労するようです。今頃になって体調不良が出てきている方もおられるのではないでしょうか。

卑近な私事なのですが、今夏はやたら家にごきぶりが発生しかなり参りました。決して家を汚くしているのではなく(むしろキレイなのですが)、近所で大規模な掘削工事があったためで地中の彼ら彼女らが全部ウチに避難しに来ているのではないか?と思われるほどでした。でも最近はいいお薬があるものですね。どういう作用かわかりませんが、約一月に一回家財の物陰にスプレーすればいいという代物があり、赤ちゃんにもペットにも安心とあったので使っていました。

そうしたら何が起こったか…。
飼っていた一匹のクワガタが昇天してしまいました。ごきぶりもクワガタも形も大きさも似ているといえば似ていますよね?盲点でした。全く可哀相なことをしてしまいました。それにしても、ごきぶりも同じ昆虫なのに、何故こんなにも忌み嫌われてしまうのでしょうね。

前置きが長くなってしまったので、表題の件は後日また書くことにします。

 

房総の海


戦争トラウマ

2025年08月29日

8月も間もなく終わろうとしていますね。まだまだ日中の猛暑が続いていますが、夜、虫の音を聴きながら就寝していると、ささやかではあっても秋が確実に来ていることを感じます。

今、通勤時にBBCのPODCASTを聴いているのですが、ウクライナもそうですが、ここのところガザ地区の暗澹たるニュースばかりで心が痛みます。同じ世界のなかで人為的に引き起こされた飢饉によって餓死者が出ていることを思うととても苦しくなります。

夏休みは以前から気になっていた「戦争トラウマ」についての本を読んでいました。

 ルポ戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う(2025)後藤遼太・大久保真紀著 朝日新書

なぜ気になっていたのかというと、臨床ではいつも3世代分のジェノグラム(家族図)をお聴きしているのですが、大体祖父に当たる方々の情報は極端に薄いか、性格・人格的にかなり偏っている人が多いのは何故だろう…という印象を常々抱いていたからでした。

「祖母が祖父を立てていた、亭主関白の昔の夫婦です。普通の夫婦です」という語りは圧倒的に多いのですが、果たして時代のせいだけでこんなに偏っている説明になるのだろうか…という疑問がありました。

私たち心理士は、第一次世界大戦中のシェル(砲弾)ショック、戦争神経症の知見からPTSD(心的外傷後ストレス障害)、今日のCPTSD(複雑性PTSD)の研究へ至るという歴史の一つの流れ(トラウマ研究のもう一つの流れは精神分析に始まるのでしょう)を学びはしますが、日本の心理教育や臨床のなかで戦争トラウマを学んだり直接扱うことはありません。

ですが、戦争トラウマも他のトラウマと同様に世代間連鎖をしていく場合が多く、依存症やDV、虐待などの家庭内の機能不全を引き起こすことを考えると、ようやく日の目を見るようになってきた大切なトピックだと思います。

戦争は被害者にも加害者にも深い心の傷を残します。どちらにも目を向け続け、子どもたちが平和な社会のなかで生き続けられるようにしたいものです。

 

A)前回の答えは、タマムシの羽でした。


夏休みをどう過ごそう…スマホ依存からの脱却を目指して

2025年08月08日

昨日は立秋でした。残暑とは名ばかりで、旱魃や水害と各地が大変なことになっていますね。今年はあまり蚊の被害に遭わないなと思っていたら、蚊は35度以上だと活動が鈍るそうです。雀など市街地の鳥も一部の地域で激減しているとの報道がありました。あまりの酷暑で可哀相なので、私も毎朝庭にやってくる雀たちに僅かながら餌と水をあげています。焼け石に水のような気がしないでもありませんが…

さて、もうすぐ4日間の夏休み。休みが少なくて大丈夫ですか?との優しいお声をいただきますが、9月にまた研修会が入ったらと思うと日程調整の都合上あまり休めないのです。でもこうも暑いと、8月いっぱいはどこかの避暑地で心理療法をやりたいなぁ…とかイマジネーションの世界では自由に羽ばたいています。

で、夏休みをどうしよう…

先日、スマホを家に置き忘れてきたことがあったのですが、やってしまった感と同時に、得も言われぬ解放感と幸福感というアンビバレントな感情を抱いたことがありました。

通勤時間が長いのでスマホで音楽を聴きながら、読書や買い物、ニュースやメールチェックをしたり、帰宅時間はヘロヘロなのでぼ~っと犬猫鳥のインスタを眺めるということをやっていたら、ファンの子たちができ始め、就寝時間前後にまでその時間が延長し、もしや私も依存症かも?という域にまで達してしまいました。以前は読書もアプリでして夜中にまで及んでいたので、これは紙媒体に戻しました。本は寝ながらだと重くて持っていられないものね。

あるITの専門家が言っていた「SNSは時間が溶ける」という言葉。これには心底納得しました。少し眺めただけで時間がずれ込むし時間を失ってしまう。時間の問題だけではありません。どんなにネットリテラシーを高めておいても、真偽不明のコンテンツや文脈から外れた過激な広告などが急に飛び込んできたりと、脳や心がとても疲れてしまっていました。

で、夏休みはスマホとの距離を適度にとってみようと思います。ゼロではなく、一日total15-30分くらいを目安に。
そして一日は洗濯漬け、一日は浴衣を着て犬とかき氷でも食べに出かけ、あとの二日は静かに読書と映画鑑賞でもすることにします。

 

百日紅、暑い時に頑張ってくれているね!

(Q)これ、何だ?


研修を終えて

2025年07月23日

うだるような暑さのなか、大阪での学会研修を終えて帰ってきました。去年も訪れた立命館大学茨木校舎。朝から蝉の声がすごかった。蝸牛の歩みですが土地勘がついてきたので、ホテルは京都にとりました。電車で1時間弱、十分通勤圏内ですね。京都の七月は祇園祭の真っ只中、夜は辻のあちこちに駒形提灯が見られ、御囃子と共に束の間の風情を味わってきました。

立命館大学茨木校舎

山鉾に飾られた駒形提灯

研修内容は摂食障害についてでしたが、自分の身に落としこむまでには復習が必要だと思いました。はぁ~。

研修二日目の夜は大阪の名物を食べようということになり、お好み焼き屋を目指しましたが空席がなく、近江牛屋さん(確か…)で愉快な時間をもつことができました。近江も近いものね。

最終日は京都まで戻り、夕刻の鴨川を眺めて帰ってきました。
御一緒できました方々、今年もまた学びと楽しい時間をどうもありがとうございました。

高瀬川 船が流れてきそう…

鴨川 水の煌めきと雲の壮大さ。なんてきれいなのだろう…


(続7)自分の中核的な価値を認める(自尊心ワークブック§7より)

2025年07月12日

ここ両日は涼しくて気持ちいいですね。夜も快眠、早朝散歩も快適です。選挙も前倒しで済ませました。私は昭和の家族観じゃないところ、ヘイトを煽がないところに入れていますが、同じ家族でも意見や価値観はそれぞれ、正に個人の領域なのでしょう。

さて、シラルディ博士の第7章は、自分の性格特性や重要な特性を見付け、中核的な価値を知る作業になります。性格特性には、1知性、2品性(倫理観、正直さなど)、3創造性、4判断力、5優しさ、6ユーモア、7他者に対する敬意、8自己に対する敬意、9向上心etc.があり、これらが0-10の間でどれくらい発達しているのか、主観で判断して数値化します。そして数値の高いものを鑑みながら、自分の中核的な価値を解釈します。

例えば、私の犬の場合なら、「知性は普通、忠誠も普通、優しさと自他へのフレンドリーさはかなり発達しており、彼女の中核的価値といえる」となりましょうか…。

朝散歩より

 


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