2025年10月16日
久しぶりに劇場公開中の日本映画を観ました。
石川慶監督の『遠い山なみの光』です。ちょっとしたタスクだったので観たのですが、その前に原作の小説を読んでいました。カズオ・イシグロのデビュー作『 A PALE VIEW OF HILLS (遠い山なみの光)』(1982)です。最初の邦題は『女たちの遠い夏』です。当時20代後半の男性が書いたものというのが驚きです。
1980年代のイギリスと原爆が投下された後の急速に復興が進みつつある1950年代の長崎を舞台にしています。「夢(夜みる夢)と記憶の回想と語り」という観点から小説も映画も堪能しました。映画は小説を大胆に解釈したものですが、戦後を生きる女たちのもがきや母と娘の関係を軸に描いています。
小説は何かが起きるのではないか、既に起きているのではないか、という不気味さ、恐ろしさが通奏低音となっていますが、全体の印象としては正に「pale、淡い」感じ。遠くから山なみ、町並みを見下ろすような、回想の物語です。