2026年08月29日
大人向けの童話という触れ込みの『涙の箱』(ハン・ガン著、きむ・ふな訳、2025)を読みました。
これは何かにつけ涙が流れてしまう子どものお話です。
悲しい時や辛い時だけでなく、美しい自然の移ろいを感じても涙を流す子どもです。
主人公はこの子ですが、他に2人の登場人物がいて、主人公が3人ともいえるのではないかと思います。
もう1人は、人生で一度も泣いたことがない、涙が目に溜まったこともないお爺さんです。
残る1人は、「純粋な涙」を探し求めて歩く涙商のおじさんです。
おじさんの定義によれば、純粋な涙は子どもの純真無垢な涙ではないのです。「怒りも恥ずかしさも汚さも避けたり隠したりしない強さ」をもったものが、純粋な涙なのです。だからおじさんは子どもに言います。「君の涙は愛に満ちた涙だけれど、まだ多くの色彩、つまり時間が必要だよ」と。
「いろんな色彩の光を混ぜ合わせれば透明な色になる」と。
これは抗えない時間と経験を沢山積んでしまった私たち大人へのエールだと思いました。
待合のところに置いておくので、良かったら御一読を。

『涙の箱』(2025)ハン・ガン著、きむ・ふな訳、junaida 挿画