2026年10月08日
前回の続きです。
番組を観ていたら、ゲストの方々が「うつはもはや心の風邪なんかじゃなくて、脳の病気ということなんですね!」と言われていました。司会も専門家もそれを否定していませんでした。
シナプス(神経細胞間のつなぎ目)の減少と脳の炎症(ミクログリアという免疫細胞の暴走)が見られる、ということが判明してきたからです。またミクログリアの暴走には脳の中の脂質との相関関係(因果関係ではありません)もわかってきました。(ちなみに、ミクログリアの暴走と認知症との関連も最前線の研究のようです。)
でもね、だからといって「うつは脳の病気」というには時期尚早ではないでしょうか。磁気刺激や食事療法で嘘のようにハッピーな状態が手に入れられたとして、その状態が一体どのくらい維持されるのでしょうか。
どんな人も、人生からストレスや失敗、喪失、挫折といったものを無くせるわけではありませんし、そもそもストレスのない生というものなど存在しません。不快な出来事に出くわしたとき、「どういう考え方」をするのかは個人差があって、その「考え方の特徴」は簡単に変容できるものでもありません。
「心というものはどこにもなく、脳そのものの働きによるものだ」という考えや立場は、「還元主義」と言われています。私たちの意識、喜怒哀楽といった情動は全て脳の作用によるものとする立場で、無意識など存在しないとする専門家もいるようです。そういった発想からは、脳を操作できれば心の問題など解決できるという展望が生まれ、脳科学や神経科学の発達が何よりも望まれるのではないでしょうか。
私は脳科学の発展は大事だとは思いますが、人間(或いは他の生物も)はそんなに単純な生き物ではないと捉えています。様々な依存症が薬や意志の力でコントロールできないこともそのことを物語っているのではないでしょうか。
解剖学者の養老孟司先生は次のように言っています。「意識とは何ぞや、を問わずに意識を扱うのは危うい。だって、その正体はエネルギーなのか何なのか、よくわかっていないんです。だから、脳科学だけでなく哲学も社会科学も動員して、その働きを博物学的に解析し記述するしかない。」と。意識を心と置き換えてもいいと思います。

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