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『”あなた”の人生をはじめるため…』

2013年05月12日

『”あなた”の人生をはじめるためのワークブック』
↑ 今、私が通勤時に読んでいるものです。車中でこれを広げて我ながら笑ってしまったのですが、なんとも大袈裟なネーミングではないでしょうか。
じゃあ、なに?、今までの人生は誰の人生だというわけ?、とでも言いたくなるような表題ですが、これは第三の認知行動療法といわれるアクセプタンス&コミットメントセラピー(通称アクト、ACT)という心理療法のワークブックなのですね。
因みに原題は、『 Get out of your mind & into your life 』
直訳すると「あなたの心から出て、あなたの人生に入ろう」となってよくわかりませんが、この場合の心( mind )とは、「心の理性的な面、思い悩むこと、思考etc.」であり、mind を多少「頭」に近いものと捉えると日本人にはよくわかるな…と思いました。
この療法は、私たちがもっている、記憶、体験、思考、感情、身体感覚等を、ポジティヴなものもネガティヴなものも全てそのまま積極的に受けとめるという、心理的柔軟性を培って「今を生ききる」ことを目指しています。ネガティヴなものからポジティヴな面を引き出したり、解釈を変えてポジティヴなものにはしません。
例えば、思い出したくないような不快な記憶。人間なら誰しもあるでしょう。これらが頭の中で反芻したり、時々顔を覗かせて私たちを苦しめるとき、人はよく最終的に「気にしないようにする。もう気にしていない」という回避行動をとります。ですがこれは、却ってその記憶や記憶に喚起される感情を強めてしまうといいます。
これらといったいどう付き合って生きていけばいいのか、これがACTモデルの目指すところなのですが、例えば「私を好きになってくれる人なんかいない」というネガティブな思考。
ACTでは、「私を好きになってくれる人なんかいない」という思考 ≠ 私 というふうに捉えていきます。「私」と「私が考える思考(私を好きになってくれる人はいない)」、とは決して等価ではないと。そんなこと言ったって私は自分のことを否定的に思っているし、実際誰も好きになってくれないんだ、と反論する人もいるかと思いますが、思考は思考に過ぎないことをこの療法を通じて体感していくのです。
本の中にこんなたとえがありました。
「あなたは雲ではなく空」「あなたは波ではなく海」
流れていく雲や繰り返し押し寄せる波一つ一つは、一つ一つの感情、感覚、思考といった、mind なのですね。mind に過ぎないのです。このメタファーを知ると、Get out of your mind & into your life というのがイメージとして把握しやすくなりますね。本書の言葉を借りれば、「あなたの人生という広い海に飛び込んでみよう」、なのです。
↓ これは春に見たレンズ雲mind?
レンズ雲

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