2016年06月15日
最近、目の保養に、『私は虫である』熊田千佳慕の言葉(2010)求龍堂、という小さな本を読みました。故熊田千佳慕先生(1911-2009)を御存知の方も多いと思いますが、大変緻密なタッチの絵本画家で『ファーブル昆虫記の虫たち』シリーズが有名です。日本のプチ・ファーブルとよばれ、屋外で昆虫や草花をよく観察し家で絵にするという、その観察眼たるや凄まじいものです。
でも決して写実ではなく、私は子どもの頃『親指姫』の絵本で感動したくらい浪漫溢れる絵を描ける人であり、他の追随を許さない独自の画風を切り拓いた人でもあると思います。
若いときに会社員の立場を捨てフリーの絵本画家として一つの道を歩み続けた人で、その生活は晩年成功するまで相当貧窮であったようですが、98歳まで現役で絵を描き続けたその強靱な精神は一体どういうものなのだろうと思い、上記の本を手に取りました。本といってもアフォリズムであり、ぱらぱらと1-2時間もあれば読めるもので、美しい絵も載っており、時に愉快でとても心打たれるものでした。
ささやかな暮らしのなかの、小さくて大きな宇宙を心から愛すること。そんな大事なことを教えてくれるのです。
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あせっても春は来ないし
忘れていても春は来る
自然はきわめて自然である。