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AIに相談?

2025年12月24日

今年のニュースで、子どもたちにとっては「AIカウンセラーのようなものの方が心の内を相談しやすい」というものがありました。気軽に使えるというだけではなく、誰にも言えない、言いたくない悩みや秘密を実際の人間よりも打ち明けやすい、心理的負荷が低いというのがあるようです。これはとてもよく理解できます。よく知らない人に相談するのはハードルが高いものですよね。一方で、AIに相談していた子どもが自殺してしまい、親が企業を訴えるという海外の報道もちらほら見聞きしました。

昔、祖母が在宅で寝たきりになったときに、喋る赤ちゃん人形(ぬいぐるみ)が与えられたことがありました。撫でたり話しかけたりすると短く応答したり、「抱っこ~」と甘えてきたり、時々おならもするのです。祖母は喜んでいて、それを眺めた人たちも笑っていましたが、半分認知症の高齢女性を随分舐めたものだと私は内心冷ややかに感じていました。案の定、人形は程なくして飽きられ、見舞客がたまに来ると話のネタの一つになるくらいでした。

この手の人形は今どのくらい進化しているのでしょう?AIを搭載してもっと豊富なコミュニケーションができているのかもしれないし、まだだとしても時間の問題なのでしょう。

そういえば、カズオイシグロの小説『クララとお日さま』は、クララというAIロボットの話でした。クララは裕福な家庭の子ども向けに造られたAF(Artificial Friend 人工親友)であり、知能が優れて高く、思考も感情もあって、買われていった先の家庭の病弱な女の子と親友となって最後までその子に寄り添おうとしていました。ただ、クララはAFとしてのスペックは最新ではなく、最後はスクラップ工場へ追いやられます。

二次元のAIの人間相手(カウンセラーや親友、恋人、結婚相手など)が出てきて、三次元も時間の問題だとして、じゃあ、それらが人間の役割を凌駕するのかといえば、例外を除き、私はそうはならないのではないかと考えています。なぜなら人にはメタ認知能力(思考する自分を更に俯瞰して思考する能力)があるので、たとえ一時的にハマったとしても、やがて「これは機械学習と深層学習を繰り返しているコンピュータに過ぎない」と心のどこかで悟ると思うからです。

もしAI相手で満足できる時代が来るとしたら、人間の死生観や愛の性質や意味が、ガラリと変わってしまうのでしょう。

スタンフォード大学、国際安全保障協力センターのハーブ・リン上級研究員は、「AI(機械学習)は統計学に基づいており、相関は示せても因果関係は導けない。最終的には人が直観を磨きながら、物事の判断をしていくことが必要であり、テクノロジーを過信するな」(朝日,2025.12.8)ということを言っています。

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