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『ヤコブへの手紙』
2012年05月26日
先日『ヤコブへの手紙』(2009,フィンランド)という、録画してあった映画を観てみました。疲れているとついついお気楽なハリウッドものを観てストレス発散をするのですが、やはりたまには良質の作品に接しないと、精神が枯渇していくような気がします。
この映画は、刑期を終えたばかりの中年女性と全盲で高齢の牧師の話です。登場人物数名、主な撮影場所は牧師館と教会の、とても規模の小さい作品です。
行く当てのない女性は、牧師の代わりに手紙を読み、代筆する仕事を頼まれて牧師館に住むことになります。牧師館には、人々からの相談や悩みを打ち明けた手紙が、毎日のように届けられます。老いて全盲の牧師は「神が自分に使わせてくれた仕事」(この仕事があるから神の役に立っている)と思って、手紙を何よりも心待ちにしています。
ところが…。その女性は終始仏頂面で、投げやりな態度。手紙を井戸に捨ててしまったり、「家事はやらない」と言ってのけたり。途中で牧師館を離れようとしたり。牧師はそれでも、いつも変わりなく穏やかに彼女に接します。
やがて、どういうわけか手紙が来なくなり、牧師が見る間に落ち込んでいくと、彼女の心に変化が起き始め…。後は観てのお楽しみ。
牧師さんへの手紙と返信というのは、それはメール(手紙)カウンセリングの原型なのだなと思いました。書くという作業は、私は実はとても大事なことなのではないかと考えています。出来事や思いを、自分の手を動かして素直に紙にのせていくことは、自分と悩み(問題)の間に少しずつ距離を置くことが出来る作業だと思うのです。
今はもはや電子メールの時代ですが、手紙を出す手間暇と、届くまでにかかる日数も、大事な要素のような気がします。