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「the cost of not caring」
2014年05月29日
アメリカの公共放送 PBS で「(心の病の)治療を怠ること・世話をしないことの代価」というニュースをやっていました。アメリカといえば、映画などの影響からか、心理療法が色々な階層の人に広く行き渡っているように思いますが、実情は意外と深刻なことがうかがえました。
以下、アメリカのお話。
心的疾患の人たちは増え続けているのに反し、病院のベッド数はずっと少なく且つ減少しているとのこと。ベッド数の減少は1960年代の「病院からコミュニティへ」というメンタルヘルス政策の転換や、近年の医療費の削減が影響しているようです。「病院からコミュニティへ」という動き自体は、患者さんの QOL の観点からも望ましいことだと思います。
ところが、頼りにすべき地域社会が実は思うように機能していなかった。結果、行き場を失った人たちが多数出現しているとのことです。個人や家族だけで苦しみを抱えたまま孤立した生活をおくっていたり、重篤な場合にはホームレス、救急病棟への搬送、収監といった問題に発展していきます。PBS はこのような社会の実情を「the cost of not caring」(治療を怠ることの代価)とし、シリーズで報道しています。
たとえば、その代価を数値で見ると、
①治療費…1380億ドル、②障害給付…500億ドル、③生産性の損失…2660億ドル、となり、全体でおよそ4500億ドル。…?…。
便利なことに数値をグーグルにかけるとすぐ円に換算され、45兆円。日本の一般会計の約半分。こういった数値は国に見てもらいたいわけで、この問題を放置しておくと更なる代償が待っているということです。
以上はアメリカのメンタルヘルス事情ですが、対岸の火事とせず、日本も今のうちから対策を練る必要がありそうです。分野は違いますが、ふと思ったのが日本の高齢社会がこれに近い気がします。施設の不足、地域社会や家族の機能不全、最近増えている徘徊行方不明者の問題など…、誰もが少なからず当事者である問題です。