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『mama』
2015年03月29日
東京で桜が満開となったとか。混雑を思うと観に行く気力も湧かないのですが、やっぱり心はそぞろきますね。
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さて、もうすぐでもないけれど、そう遠からずやってくる母の日(この日は別にいいのですが)にちなみ、「母」を扱った娯楽映画をご紹介。それはアンディ・ムスキエティ監督の『mama』(2013年、加・西)。そのものずばりママ。制作総指揮は私の好きなギレルモ・デル・トロ監督で、映画好きの方ならご存知、ホラー映画が多い監督です。
そして『mama』もホラー映画。ギレルモ監督(デル・トロ監督という方が正しいのか?)が制作に関わったホラーは、そこら辺のむやみに残酷で気持ち悪いだけのものではなく、またストーリーの安っぽいものでもありません。ホラーでよくある、亡霊が生きている人をやたらと残酷に襲う、祟る、という設定は、非常にその亡霊を冒涜している気がして好きになれないので真面目に観ないのですが(例えば邦画の『呪怨』)、この監督の作品は「美しい」と思わせるところが違うのでしょうか。
恐ろしく、怖く、美しく、悲しく、情をしっかり描きこんでいるので心を打つのです。このmamaも悲しい人だなとつくづく思う。
内容は割愛するにしても、最後のシーンを観て思ったこと。一人の幼子の選択もしくは犠牲(?)によって、mamaが救われます。このシーンが何より悲しい。救われるのに(私はそう捉えているのだけれど)、激しく悲しくそして美しいのです。よくこんな落ちの作品を作れるなあ…と感心します。白か黒ではなくグレーでもなく、文字通り、分断です。(分断?ここでどう想像されるかは作品を観る方のお楽しみ。)
この映画で連想したのが、ワーグナー作のオペラ『さまよえるオランダ人』。幽霊船のオランダ人船長(腕が立ち傲慢だったため、神に呪われて生涯大洋を漂うことを運命づけられた男)の呪いを解くのは、乙女の純愛によってなのですが、このモチーフが『mama』にも転用されているのではないかと思うのです。船長の呪いが解かれるということは安らかな死を得ることを意味しますが、このmamaもやっと昇天できるのだと思います。これが男女の愛ではなく、育ての母と子の絆によって、なのです。
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