2015年10月16日
随分久しぶりにオペラを鑑賞してきました。R.ワーグナー作の『ラインの黄金』です。これは『ニーベルングの指環』4部作の”序夜”にあたるものです。今後3年間の間で4部作が上演される予定だというのだから、随分先の長い話です。
さてさてオペラに詳しくない私が観てまず思ったのが、あっ、これは映画『ロード・オブ・ザ・リング』の世界だ、ということです。地底に住む小人族、地上に生きる巨人族、人間、水底に棲む妖精たち、天上界に棲む神々、半神、神と人間の間に出来た子などなど。
時代的には『ロード・オブ・ザ・リング』の原作であるトールキンの『指輪物語』より遡る作品が『ニーベルングの指環』であり、これらはヨーロッパ各国の神話や叙事詩を元に作られたので話が似ているところがあるのですね。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』は好きでそれぞれ3部作全て観ているのですが、善悪二元論的で戦闘シーンが多いのが少々気になっていたし、話の展開が速く筋を追うのが大変でした。「闇の世界」を大変醜く描き過ぎではなかろうか…。とはいえ、CGを駆使した大迫力の映像が素晴らしかったのは確か。
一つの指環(指輪)をめぐる物語であるのは、ワーグナーのオペラも同じであるものの、こちら(ラインの黄金)はもっと混沌とした世界の幕開けでした。神々も罪を犯すし愚かだしエゴイスティックだし、嘲られる対象でもあるし、小人にも巨人にもそれなりの言い分がある。それは私たちの社会の構造そのものを映しているように思いました。
芸術監督は曰く、「指環を巡る壮大な物語は、権力、愛、自然破壊、終末、救済など、私たちの生きるこの現代にもそのまま通じる内容が描かれています」と。
権力と支配の象徴である黄金の指環。「指環を手に入れるものは世界を支配する力を得るが、と同時に、指環の奴隷ともなる」という指環にかけられた呪い。
この指環は今ならお金でしょうか。
『ラインの黄金』で天上界の神々は、神の支配力を示すに相応しい巨大な城を巨人達に建てさせるのですが、それは結果、要塞のような、戦うための城として完成し、やがて世界は戦いの地へと化していくようです。これなども’指環の奴隷’となってしまったことを表しているのでしょうね。