人は社会的な動物である

2016年11月13日

今読んでいる文献から派生したお話…。

ベッセル・ヴァン・デア・コーク著『身体はトラウマを記録する-脳・心・体のつながりと回復のための手法』(2016,紀伊國屋書店)というもので、ヴァン・デア・コーク先生はトラウマ研究の第一人者なのですが、この著書の表紙絵(昨日のブログphoto)どこかで見たことがあるなと思っていました。

それもそのはず、アンリ・マティスのJazzシリーズの一枚『イカロス』でした。イカロスはギリシャ神話に出てくる登場人物で、蝋で固めた翼を付けて空を飛翔しますが、太陽の熱で蝋が溶け、海に墜落して命を落としてしまう男の子の話でしたね(但し諸説あり)。今ではテクノロジーや人間の傲慢さを戒める神話として有名です。

コーク先生の著書の原題は『THE BODY KEEPS THE SCORE』Brain,Mind,and Body in the Healing of Trauma(2014)

今日、トラウマ(心的外傷)は精神に影響を及ぼすだけでなく、脳や体にも重篤な影響を与えることがわかっています。そして何をトラウマとするかは単回の大事件や大事故だけでなく、「発達性トラウマ」という幼少期からの生育の段階で受けるトラウマや「親子関係の性質」に目を向けて、脳や心や体にアプローチする色々な治療法を研究・実践していく必要性をこの本のなかで繰り返し説いていました。

ところで、この本の制作者はなぜ『イカロス』を使ったのか?人は社会的な動物であるのに、そのことを軽視して精密医療化している最新の精神医療に対する警鐘なのか。それともイカロスの羽はbodyの一部であり、bodyの損傷ということは彼がトラウマを負っていたことを暗に示したかったのか…。何となくなのか…(笑)。

ブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』を読むと、子どものイカロスの話というより、その父ダイダロスの話になっています。ダイダロスは並外れて優秀な細工師で、幽閉されていた迷宮から逃げ出すために息子と自分の分の羽を作り本人は助かりました。ダイダロスは優秀だけれど嫉妬心から甥を殺めてしまうほどの激しい心性の人物として書かれているので、父ダイダロスと無邪気な息子イカロスの関係ももしかしたら複雑なものだったのかもしれません。

燃え

燃え

 

 


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