映画『ムーンライト』

2019年03月15日

少しずつ春の陽気になってきました。
最近また映画虫が蠢き出し、時間をみつけては新旧の作品をちょこちょこと観ていました。大変話題になった『ボヘミアン・ラプソディ』、2016年米アカデミー賞を取った『ムーンライト』etc.

ボヘミアン・ラプソディ、そんなに良かったですかねぇ…。クィーンの歌(ライブシーン)は良かったけれど、ストーリー展開は先が読めてしまいました。

群を抜いて秀でたアーティストが、ナルシスティックで倒錯した世界に生き美的世界を追求しているというのは、スケールは違うもののルキノ・ビスコンティの『ルートヴィヒ』が原型のように思いました。そんなことを言うと、ビスコンティファンに怒られるかしら。因みにルートヴィヒは19世紀半ばバイエルンの「狂王」と言われた人で、芸術に狂い、恐らく誰もがカレンダーか何かで見たことのある有名なお城を建設した人です。

ある種の美は、倒錯した世界と隣り合わせなのでしょうか。私はマイケル・ジャクソンも同系列に位置すると見ているのですが。

それはさておき、それよりも静かに感動した作品が2016年の『ムーンライト』でした。主人公の学童期、ハイスクール期、成人期が3つの章でそれぞれ描かれています。

主人公は黒人で母1人子1人の家庭に育ち、繊細で内向的(学童期、ハイスクール期はいじめの対象です)、感情を表に出さず、同性愛的な傾向をもっています。アメリカ社会が抱える貧困、人種、ドラッグなどの大問題が背景にあり、主人公は被虐待児で苛酷な環境を生きているのですが、優しい大人との出会いもあり、またその人の矛盾を目の当たりにして傷つきながら、そして成人してからは自らが矛盾を抱えつつも生き抜いていく様が描かれていきます。

第3章で、薬物依存更生施設で暮らす母親が、成人した主人公に過去を謝りながら「私はクズだったけれど、あなたを愛している」「薬には手を出すな」と話す場面があります。ああ、こういう風に言える「強さ」というのは必要だなとしみじみ思いました。「私にはあなたを愛する資格がない」と言われるより、「それでもあなたを愛している」と言われたほうが、子どもは断然救われることでしょう。

格差もドラッグも虐待も海の向こうの話ではなく、日本においても身近な問題となってきています。どうぞ興味のある方はご覧くださいね。

camellia

 

 


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