2019年03月30日
花爛漫というには肌寒い日が続いており、3月終盤とは思えないくらいです。
さて、たまには本の話を。といっても手放しで推薦というわけではなく、今まで誰もやってこなかった脳科学に基づく画期的な方法という帯に釣られて買ってしまったものの、うーむ…としばし考えてしまったものです。
著者はドイツの臨床心理士で、原題は『panikattacken und andere angststörungen loswerden!』、『パニックとその他の不安障害は取り除くことができる!』という意味でしょうか。やり方は「テンセンテンス法」と「パターン・インターラプト」という二本立てです。
テンセンテンス(10の文章)法とは、「あなたにとって本当の幸せとはどういうものか」を具体的、現在形、ポジティブな形で10の文章に表し、一つの文章を五感(視・聴・嗅・味・体感)それぞれ別個に使って味わいながらイメージしていくというものです。こうすると一つの文章に付き40万個のシナプスの結合を作り出すことができ、一晩のレム睡眠の間に約120万のニューロン(神経細胞)の連結が行われ、数週間繰り返し続けていくとポジティブなネットワークが発達した脳になっていくのだそうです。
脳科学の根拠が示されていないのでどこまで本当なのかわかりませんが、私には昔からある自己教示訓練が発展したもののように思いました。そこまで画期的かと言われると、はて、どうなのでしょうか…。
「パターン・インターラプト」(パターン阻止)はちょっとユニークです。どういうことかというと、パニックや予期不安は主に自分の視覚(映像)、聴覚(考え)、身体感覚が引き起こすものなので、それらが生じたときに阻止してしまうというものです。例えば、「これから電車に乗るけれど、パニックになったらどうしよう…」と不安に思っているときに、よく自分を観察をしてみます。ある人は電車で過呼吸などパニックを起こしているところをイメージ(視覚)しているかもしれないし、ある人は「パニックが起きたらどうしよう」という思考(聴覚:つまり思考は自分の声で聴いているものです)が生じているかもしれない。またある人は胸やお腹の辺りに微かな違和感や不快感を感じているかもしれない。
次に、視覚の人の場合、「車内でパニックを起こしている」映像を脳の左右のどちら側で見ているかを捉えます(目を瞑って行うとわかりやすいそうです)。右で見ているようであればその映像を左側へ移す。すると映像が変化したり不安が軽減されていくそうです。聴覚の人の場合も同様に、ネガティブな思考をどちらの耳で聴いているか。右側で聴いているとしたらそれを左にずらす。すると思考のネガティブな影響力が減っていく。
これ、上手くいきますか?!私の場合、思考はネガティブもポジティブも右耳でしか聴いておらず、また映像も脳の真ん中で見ているので、「ずらしテクニック」は全く上手くいきませんでした。何度も本を読んでいると、人はネガティブとポジティブを左右の脳で使い分けている、という刷り込みが起きてきます(笑)
ずらしテクニックが上手くいかなくても他のものが記されているのですが、それらが斬新なアイデアかというと他の心理療法でも随所見られるものだったりするので特に真新しさはありませんでした。寧ろずらしテクニックの方が斬新でした。
著者は標準的な心理療法は不安障害に効果なしと否定していますが、そこまで言っていいものかどうかも疑問でした。パニックが起きる4つの原因というところは参考になります。待合に置いておきますので、興味のある方はご覧くださいね。