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禁止のモティーフ
2012年06月16日
空はどんより鼠色でしとしと雨。雨音はショパンの調べ?
明日からは雨に加えて25度以上になるようなので留意しないといけませんね。この時期の食べものにも注意しましょう。
さて、自己愛のつづきは後日に譲ることにして、ある一つのことをずっと頭の片隅で考えていました。
それは、前々日のブログで取り上げた、『鶴の恩返し』の話です。
(この「見るなの禁止」については精神分析医の北山修先生の著書に面白いものがありました。イザナミとイザナギの神話などが取り上げられています。)
一羽の鶴は、与兵衛(多分こんな名前だったような。よひょう?)に命を助けられ、一人の美しい女「つう」となって男の前に現れました。そして恩を返すために、「戸を開けてはならぬ」といって、毎晩自分の羽で美しい反物を織り上げていました。(あらすじの些末は諸説あり。)
一方、先日観た中世ドイツが舞台の19世紀オペラ『ローエングリン』は、「名前や出自を聞いてはいけない」と言ったのは騎士の方で、恩を負っていたのは姫君でした。
同じような「禁止」をモティーフにした話なのに、日本の昔話は、禁を破った者にそもそも負い目はない。むしろ、相手の方が恩を負っている。与兵衛が見てしまうのも人情として無理はない。障子の向こうで一体何が行われているのか好奇心があったにせよ、日ごとに痩せ細っていくつうを心配してもいたのですから。つうの恩返しも誠に痛々しい。何もそこまで…。
一方、ドイツ楽劇の方は、姫君はニ重の裏切りをしました。一つは名誉を回復してもらった恩を忘れたこと、もう一つは禁を破ったこと。姫君は、自分の疑惑や不安を解消させるために、聞いてしまったのです。自己中心的というか、自己愛的というか、自我がしっかりとありますね。
似たモティーフの話でも、東西で登場人物の心性がこうも違うのが面白いなと思いました。