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投影(project)

2012年07月11日

先日『クロエ』(2009,米etc.)という大人の映画を観ました。『恍惚』という仏映画のリメイクです。中盤からホラーサスペンス映画?並の恐ろしさを若干感じ、久々に面白い作品でした。
舞台はカナダのトロント。
クロエは、若い娼婦です。
主人公は50代の主婦で婦人科医。大学教授の夫とピアノを学ぶ息子との3人家族。絵に描いたようなハイソな家庭で、主人公は、冬のトロントの町でもハイヒール姿で生活感が薄い。美しい人ではある。
あるとき、この主婦に一つの疑念がわく。夫が浮気しているのではないか…と。夫はふだんから若い学生たちと過ごしているし、ウェイトレスの女性にも優しい。疑惑がどんどん膨らんでいき、妻は偶然出会った若い娼婦クロエに頼み、夫を誘惑させる。彼が浮気をするタイプか否かを確かめるために。
クロエは夫との関係を子細に渡り報告する…。
この思い詰めた青白く美しい妻は、純粋に心配しているのではなく、夫を浮気へと誘導していることに全く気付いていません。いろいろな手段で浮気へと導き、「ああ、やっぱりこの人は裏切る人なのね」と確認したがっているように思われました。
フロイトの著書に、防衛機制の一つである「投影」についての記述があったのを思い出しました。一人の妻が夫の浮気を疑う。あの人は絶対に怪しい。浮気しているに違いない。実際のところ、夫は浮気などしていない。フロイトによれば、これは妻の心の内にある「浮気がしたい」という隠された欲望が、夫に投影(project)されているのだ、とのことでした。
では、なぜこんな込み入ったことをするのか。それはこの妻にとって、浮気など以てのほか、許されないことなので、自分の内なる願望を認めるのさえ怖いからです。ですから、この欲望を夫のものにして夫を非難する。
映画のなかの妻にもそれが見受けられます、と私は思います。
因みにどこがホラー的かというと、クロエが次第にプロスティテュートらしからぬ存在になっていくからです。
この辺は映画を盛り上げるためですかね。
東京駅丸の内北口
↑ 東京駅舎・丸の内北口側

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