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『ある秘密 Un secret』

2013年07月20日

『ある秘密 Un secret』という2007年のフランス映画を観ました。久々に出会った珠玉の作品でした。
ナチス占領下のフランスが舞台の歴史映画なのですが、大がかりな歴史ものというよりは、ある秘密を抱えた家族の物語で、夫と妻、母と息子 etc.の二者関係の心理描写がよく描かれているなと思いました。
主人公は虚弱体質で運動の苦手な10歳ぐらいの少年。元運動選手の両親に育てられているのですが、親と比較して何となく肩身の狭い思いをしながらも、母親の飛込(水泳)の美しさに見とれて静かに尊敬していたり、とても繊細な感性の男の子です。
この子の空想の世界には「運動神経が良く、できのいいお兄さん」というのがいて、事あるごとに兄を想いながら暮らしています。こういった子どもの空想は児童文学のなかでよく見られますよね。感受性の高い or 不安の高い子どもたちは、ファンタジーのなかに好きな子どもや興味ある子どもを作り上げて、あたかも実在するかのように交流をします。たとえば、赤毛のアンも鏡の中の女の子と話をして、自分の寂しさや孤独を慰めていました。
ですが、この映画は「空想の兄が実は…」というひねりがあります。
そして、男女の愛や欺瞞、疑惑、罪悪感などが、戦争が引き起こす不幸や悲しみを更に深いものにする、ある家族の物語なのです。男女の愛は時にとても残酷で、見ていられないほどでしたが…。
少年はきっと、親や周囲の大人たちの顔色や態度を鋭敏に感じ取り、兄の存在を無意識的に知り、隠された過去を再び浮上させ、家族の再構築をしたのかもしれないなと思いました。
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