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内側と外側〜When Marnie was there〜
2014年08月07日
さて、この前観に行った映画はジブリの新作『思い出のマーニー』。以前、クライアントさんが原作を読んでみて色々考えさせられた、良かったと教えてくれたので、私も早速読んでみました。
ともかく、映画はとてもよく出来ているなーというのが最初の感想。原作は1967年出版のイギリスの児童文学です。おそらく時代設定もその頃。この原作がとてもよい。何で今まで知らなかったのだろう…というくらい、素晴らしい作品なのです。映画はこのイギリスの文学を、上手く日本(北海道の海辺の村)を舞台にした作品に作り上げているところがさすがです。
最初映画の広告を見たときは、なんでまた金髪碧眼に洋館なんだろうと辟易していたのですが、原作をかなり忠実に生かした作品なのだなと納得しました。
映画は観ていただくとして、主人公アンナ(杏奈)のような子(人)には、臨床でもよく出会うと思います。アンナは、世の中には内と外があって、大半の人は輪の内側にいる人たちで、自分は輪の外側にいる存在だと思っています。そして自分のことが嫌い。原作の舞台はイギリス東部の海辺の小さな町。イソシギという鳥の鳴き声が、アンナには「pity me〜 oh〜pity me〜 (私を気の毒に思って)」と聞こえてきます。アンナの心の投影以外のなにものでもありません。
この作品をファンタジーやミステリーとして自由に括ってもいいと思いますが、「記憶とその再現、再演」、「過去と現在の世界観の描き直し」という、深い癒しに満ちた精神世界の話だと受けとめて読んで(観て)いました。
原作のアンナは最後の方で、内側と外側の境界線が実は柔軟なものであることに気付いていきます。また、それまで「あの人たちは内側の人たちだ」と固く信じていた人たちにも、少なからず「自分と同じように孤独感や疎外感のようなものをもっている」ということを知っていきます。この気づき、とても重要なものですよね。