1. 心理 東京
  2. ブログ 心's LOOM
  3. 心というもの

心というもの

2016年04月15日

少し前にどこかで読んだ専門誌の記事のなかに、根本的な問いかけがあったことを思い出しました。

それは「臨床心理士(ないし心理療法家)は心を治療することができるのか?」という問いでした。「答えはNoです」とも。この忌憚のない意見にきっと不安に思われる方もいらっしゃることでしょう。著者は以下の二つの点から心を治療することはできないと述べていましたが、これは心理療法やカウンセリングを受けるにあたってとても大事なことだと思うので少しご紹介します。

一点目として、実体がなく主観の領域である心に、医療モデルをそのまま適用することはできないこと。

二点目として、心の不調はその人の「主体性がうまく発現していない」ときなので、第三者が「治療」という操作を加えるということは、そこに「主体の主体性を否定してしまうジレンマが発生する」ということ。

医療モデルというのは実体のあるものを自然科学に基づいて治療していくことで、それは精神科にせよ心療内科にせよ、「心そのもの」を扱うというよりは、起きている現象に〇〇症や〇〇障害などの診断名を与えて投薬なり何なりで治療していくものです。うつ病なのでそれを治していきましょう、というような具合です。心を治すのではなく、うつ病を治すのです。

一方、「心そのもの」の扱いは社会科学や文学、哲学、語学などの人文科学の領域にまで及ぶものです。ですので心の専門家の存在意義は、クライアントの主体性、心の成長可能性が発現していくように環境を整えていくことにあるのだ、という内容でした。

特段の症状や生活していく上で重い支障がなくとも、生きていくことに伴う悩みというのは人生につきものです。そのことを対話し、自己を見出し主体性を取り戻していく場が、今も未来も求められていくのだと思います。

ビオラ.JPG


このページの先頭へ