2017年03月31日
弥生の月も今日で終わりです。東京のソメイヨシノは来週が見頃でしょうか。専大前には山桜の樹が1本あるのですが、既に葉桜になっていました。
さて、先日手に入れた本について今日は紹介したいと思います。それは 中井久夫著『いじめのある世界に生きる君たちへ』(2016)中央公論社 です。
中井久夫先生は精神科医で、精神療法家であれば直接教えを受けていなくとも多大な恩恵に浴している学者だと思います。大変失礼ながら私は古典の世界の人かと思っていたのですが、御存命で現在80代のようですね。
上記の本は『いじめの政治学』という小論を元にして、小学校高学年の子にもわかるように噛み砕いて書かれたものです。優しく繊細ないわさきちひろの挿絵も魅力で、大人であれば小一時間くらいで読めてしまいます。
何がいじめであるか、いじめのワナのような構造について、加害者の権力欲について、いじめの三段階(孤立化、無力化、透明化)について、いじめは被害者を隷属化し尊厳を奪う犯罪であること、などが丁寧に易しく説かれています。やられてやり返すというような、立場がクルクル逆転するものはいじめではないのです。従って「時にはいじめも子どもの世界に必要」「いじめられる側にも落ち度がある」という安易な意見は通らなくなります。
すぐに理解できたような気になって、その実一回読んだだけではするりと腕の中から抜け落ちてしまう。でも読み返すと非常に重要なことが書かれていてじわじわと響いてくる。いじめられている子どもしかり、まずは大人たちが読むべきものだと思います。なぜなら、大人の世界にも、というより大人の世界にこそ、夫婦、嫁姑、親子、組織の人間関係など権力欲に基づく関係が蔓延しており、子どもは大人の世界を見て育つからです。待合のところに置いておきますので興味のある方はどうぞ。