2018年05月13日
寒かったり暑かったりと5月の天候は不安定ですね。
さて、先日やっと観たかった映画、今年の米アカデミー賞作品賞である『シェイプ・オブ・ウォーター』を観てきました。周囲の評価は頗る悪かったものの(笑)、私的には楽しめました。確かにギレルモ・デル・トロ監督ってこんなにエログロだったかしらとは思いました。他の作品の方が異様さのなかにも幻想的で美しくずっと情感が湧いてくるかもしれません。
単純な話といえばそれまでで、一種の異類婚姻譚というか、政府に捕獲された謎の生物と声を失った女性の恋愛ファンタジーでした。
主人公やその友人たちは、人種、性別、仕事、性的指向等によって差別を受けているマイノリティに属し、孤独でありながらも、お互い支え合って慎ましく生きている、そんな人たちでした。煌びやかで豊かな60年代アメリカの家族主義・家庭主義と対照的に描かれることによって、社会の周縁に生きる人にスポットを当てています。またそこにアメリカ vs. 旧ソの冷戦の絡みがあり、穏やかではない状況に主人公たちを巻き込んでいきます。というよりも主人公の働き先がそもそも不穏な職場なのですが。
全体的に沈鬱な空気が押し込める世界で、異種な生き物との恋愛ファンタジー。この映画に感動するのはもしや女性の方なのかもしれないとふと思いました。昨今の政治家や官僚、有力者とされる人たちの醜悪な言動を見聞きしていると、しまいには女性の目は男性という生物を超えたその先の何かへ向かっていくかもしれない、とさえ思えるからです。それがたとえ想像の世界であるとしても…。
異類との恋愛といえば『美女と野獣』が有名ですが、原作は女性によって書かれたものでした。小さいときにジャン・コクトーのフランス映画をテレビで観たように記憶しているのですが、古城が舞台の豪華絢爛異様な空気を感じる美しいモノクロ映画でした。その後リメイクが何作も作られるということは、一体何を意味するのでしょうか。
ご存知のように美女と野獣は最後、野獣が王子に変わります。変わってしまいます。折角野獣に惹かれていったのだから、これがハンサムで若い王子に変わっては身も蓋もないというか、かなりがっかりしてしまうのですが、そう思う女性も少なからずいるようですね。
『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末は、さあ、どうなるか。
これがアカデミー賞なの?と落胆される方もいらっしゃるかもしれませんが、デル・トロ監督も南米出身であり、白人男性優位の巨大なハリウッドの世界で圧し潰されずに頭角を現してきた人なのだということも、タイムリーな話題なのでしょうね。