2023年10月21日
『白雪姫 あなたが知らないグリム童話』(2019仏・白)という映画を観ました。舞台は中世ドイツではなく、現代のフランスです。スマホも出てきます。まあ、口コミは悪いこと!「冒涜だ」というものもありました。白雪姫ってそんなに神聖なお話ではなかったように思いますが…。
ドイツのグリム兄弟によるグリム童話集は昔話を収集・編纂したものですが、昔話がどうしてこんなに心に響き長く読み継がれるのかといえば、私たち普通の人間の普遍性が多少ともそこには描かれているからだと思います。
この『白雪姫』を観ていてまず思ったのは、精神科医の斎藤学先生がかつておっしゃっていた白雪姫の解説そのものだなあ…ということでした。膝を打つ思いです。
曰く、白雪姫は一人の少女の一筋縄ではいかない成長譚です。恋愛・性愛の経験を経ながら、母娘分離と親密な関係性の成就が描かれているということでした。恋愛・性愛の経験は「7人の森の小人たち」、母娘分離は「継母=実母=魔女殺し」、親密な関係性の成就は「王子様との出会い」ということで、ドラマチックに物語化されているのですよね。魔法の鏡とか毒リンゴというのは、母娘分離が時に壮絶な闘いになるという象徴なのではないでしょうか。
現代版『白雪姫』ですが、兎に角フランス映画らしく、かなり性愛に偏り過ぎてはいます。性愛に解放された奔放な小娘と、かなり気色の悪い7人の男たち(1人は普通の友達)、嫉妬の火を燃やすやり手の継母といった登場人物が主に出てきます。ロケ地はどこなのか、薄暗い森の中ではなくて岸壁に囲まれた隔絶された谷あいの美しい村です。
ここが現代版らしいのか、最終的に王子様の登場はありません。女の子は「私は誰の者にもならない」と言い放ち、食堂のホールの仕事をしながら村での生活に安堵と幸せを見出していくのだろうな…というところで映画は終わります。多様性の一つの在り方なのかもしれません。