2024年10月17日
今年のノーベル文学賞はアジア人女性初の韓国のハン・ガンさんが受賞されました。私はまだ作品を読んだことがないのですが、所属している読書会ではとても盛り上がっていて、過去のアーカイブでハン・ガンさんのお話を聴くことができました。
入手出来次第(今は売り切れ状態)読んでみたいと思いますが、歴史的なトラウマや人間性についての繊細で緻密、革新的な表現が評価をされたとのこと、非常に興味をそそられます。ハン・ガンさんの声と語り口は、水琴窟の音を聴いているようにとても静かで控えめでした。残虐な史実を小説にするときには、そこに哀悼の念も入れたいとおっしゃっていたことが印象に残ります。
そんなこんなで、ハン・ガンさんとは直接関係がありませんが、ここのところ韓国の映画(『タクシー運転手』『シークレット・サンシャイン』)を観て休日を過ごしていました。『タクシー運転手』は1980年の軍による民衆弾圧事件を扱ったもの(光州事件についてはハン・ガンさんも小説を書いています)で、『シークレット・サンシャイン』は子どもを殺されたシングルマザーの心の傷とその後必死に生きんとする姿を描いたものでした。
国民や群衆レベルのトラウマにしても個人レベルのトラウマにしても、そう容易く回復などしないことを改めて考えさせられました。『シークレット・サンシャイン』の母親は神による救済(赦し)を求めて信仰の道に入りますが、神も彼女の深い傷を思うように癒してはくれないものでした。では一体何が人を救い得るのか…。
そこは個々人の解釈や考えに委ねられると思うのですが、私は “長い時間と寄り添い続けられる人や社会の存在そのもの” なのだと思いました。セラピーもそのなかに包摂されて初めて成り立つものなのではないでしょうか。