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エンパワー(empowerment)

2012年03月12日

エンパワーという言葉をご存じでしょうか?
エンパワー(empowerment)は、臨床心理やソーシャルワークの世界では日常的に使われていると思います。それは、クライエントさんなどの人に力づけをすること。その人が自律的に物事を実行できるようにしていくことです。
このエンパワー、私も色々な人たちからもらっています。相手はメンタルケアの専門家だけでなく、むしろそれ以外の人たちから。当然、クライエントさんたちもそこに含まれます。「ああ、そうか、この人はこういうことにずっと苦しみながらも、ここまで来たのね…」とか、半歩踏み出して何かしようとする姿や、ずーっと沈んでいる人がちょっとした瞬間に見せる笑顔、或いは逆にずーっと笑顔だった人がやっと流せた涙などに。自分自身が仕事以外の場面で落ち込んだり疲れるときがあっても、これを乗り越える力を日々与えられるわけです。
ナラティブセラピーという現代の心理療法があるのですが、これは伝統的な心理療法とは軸を異にする思想が基盤になっています。今までの心理療法においては、「専門家はクライエントから影響を受けてはいけない。反対にクライエントに影響するのが専門家の役割」という前提があるのですが、ナラティブセラピーはそれとは異なり「セラピーはセラピストとクライエント双方の人生に影響し合う」という考えを持っています。例えば、臨床から離れた場面でセラピストがクライエントのことを思い出したりすることもあるわけですが、これは伝統的な立場から見れば「セラピストが巻き込まれている」ことにもなりかねないのです。
どちらの方が自然なのでしょうか?私は伝統的な心理療法の立場を尊重しながらも、ナラティブセラピーのほうに関心を寄せています。「医師と患者」みたいな関係では、心理療法は乾いてつまらないものになってしまうと思っているからです。
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↑ムスカリ。毎年春を告げてくれる可愛い花です。植えっぱなしOK、自然に繁茂します。

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