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『ピクニック at ハンギング・ロック』

2013年01月29日

久しぶりにお気に入りの映画、『ピクニック at ハンギング・ロック』という1975年のオーストラリア映画を観ました。
これは大変怖い、興味をそそられる話なのですが、単純な恐怖映画ではありません。
時は1900年(ビクトリア朝終焉間近)、オーストラリア・ビクトリア州にある寄宿制の女子学院(collegeと表されていましたが10代後半くらいの娘たちの学校)が舞台。良家の子女たちが大半を占めるこの学校は、感受性が高くとても麗しい乙女たちの花の園です。但し、あくまでも一見。
事件は学校の行事であるピクニックの日に起こります。
生徒たち一行は、数百万年前の火山によって隆起した岩山(ハンギング・ロック)へと馬車で向かい、岩の下で一日を過ごします。南半球の暑く乾いた空気と土地、毒蛇やトカゲ、極彩色の鳥たち、幾つもの奇岩が連なるハンギング・ロック(イメージとしては妙義山?)。磁場の影響のせいか、何人かの時計が12時で止まってしまいます。一行はお茶を飲んだり詩を読んだり銘々緩やかな時間を過ごし…。そのうち数人の少女たちが岩山の奥深くへと登っていき、教師と2名の生徒が行方不明になるお話です。
事件なのか、事故なのか、神隠しなのか。
映画は柔らかく民族楽器的な音調のパンフルートの響きと共に進んでいきます。
荒々しさ剥き出しの岩々はオーストラリア土着の霊的なもののようにも感じられるし、一方、夢想的な思春期の女の子たちに見られがちな集団ヒステリー的な匂いもする。
以前この映画のパンフレットを見たときに、時代設定が女性に貞節や柔順、フェミニンさを要求していたビクトリア朝時代であることを忘れてはいけないというようなことが書かれていました。例えば、女性はコルセットで腰をきつく締め上げ、胸元など肌を露出することを禁じられていた時代。映画では「町を通り過ぎたら手袋を外してもよい」と許しが出ます。失踪した少女たちは、岩山の奥へ登りながら、靴も靴下も脱ぎ捨てていきます。
抑圧されていた女性たちの集団ヒステリー現象。私はそう睨みつつ、且つ神秘的なところを楽しんでいます。
(これは余談。自然描写の場面で、高い木の上に、ある真ん丸の動物が。コアラでした。コアラが日本へ来るのが1984年。もう30年経つんですね。)
スワニー

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