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映画のなかの集団行動

2013年10月05日

時々蒸し暑くてまいりますが、朝晩は風がひんやりして気持ちよくなってきました。今日などは寒いけれど、キンモクセイはまだでしょうか…。
ここのところの世情をみていると、気候がどうのこうの〜とか、趣味の映画〜のことなど悠長に書いている場合でもないように思うのですが、まあそれはそれということで。
『自由からの逃走』という名著がありましたが、もういちど読み返したいなと思うここ最近です。
視点はずれますが、『ディバイド』(2011、米・加・独)という気持ちの悪い映画を先日観ました。昨年日本で公開されているので観られた方もいるのでは。核戦争直後のニューヨークのシェルターに取り残された男女9人の物語。もうこれだけで、およその察しはつくというもの。
よくありがちなシチュエーションスリラーなのですが、密室の極限状態に置かれた人々が己の弱さをジワジワと露呈していくさまだとか、小グループの集団圧のようなものがよく描かれていて、鑑賞後も気持ちのすっきりしない後味の悪い作品でした。よく描かれていると書きましたがそう思わせてくれるという意味においてであって、実際似たような状況に遭遇したら人間がどうなるのかはわかりません。スリリングに描くにしても、もう少し理性的、三人寄れば文殊の知恵的にならないものかと淡い期待を寄せるのですが、それは甘いのでしょうかね…。まあ、カナダやドイツが制作に加わればおよその作品が不条理に終わるものですし…。
似た作品というわけではないけれど、次第にエスカレートしていく集団行動の心理を描いたものなら、『エクスペリメント』(2010、ドイツ映画『es』のリメイク)の方が映画として断然よく出来ていました。上の映画はどうでもいいけれどこれはお奨め。実際の社会心理学実験、スタンフォード大学で実行されたスタンフォード監獄実験(Stanford prison experiment)を題材にしたものです(この実験の元には社会心理学史上、更に有名な実験がありますが)。囚人役の人たちと看守役の人たちを有償で募集し、疑似監獄のなかで一定期間過ごさせるという実験です。
閉鎖された空間において、人々は与えられた役割を次第に率先して遂行していくようになっていくことや、権力と服従の関係が簡単に暴力に転がりやすいことなど、人間行動について高を括ってはいけないなと思わせるものでした。昨日、売上げの悪い従業員に全裸踊りをさせるという企業の報道を読み、信じられないような話で目を疑いましたが、なんだかスタンフォード現代版のように思えてきますね。
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