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『緑はよみがえる』(2014、伊)

2016年04月28日

ただいま、非常に噴飯もののおバカな愛すべき本を読んでいるのですが、それはゴールデンウィーク休暇前にご紹介するとして…。

昨夜は岩波ホールで映画を観てきました。

23日から公開のイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の『緑はよみがえる』です。76分という程よい時間の珠玉の作品でした。オルミ監督といえば『木靴の樹』という作品が有名ですが、これは子どもの頃見せられたものの眠ってしまっていつまでたっても観終わらない作品のなかの一つとなっています。そんなふうに心に引っ掛かっていたところ、『緑はよみがえる』を先に観ることになったわけですが、この監督は何て偉大な人なのだろうと改めて知ることになりました。

『緑はよみがえる』は第一次世界大戦の激戦地、北イタリアのアジアーゴ高原における、厳冬期の塹壕が舞台となっています。一面雪に埋もれた静寂の銀世界。美しいアルプスの山並みと皓々と輝く月、一本の落葉松の木、青々と茂る樅の木たち、時々姿を見せるウサギやキツネ。それらは、雪に埋もれた塹壕の小さな覗き窓から、兵士たちが見ることの出来る外の世界です。塹壕のなかは疫病、飢え、極寒で兵士たちの士気は落ち、追い詰められ、時折届く故郷からの手紙などによって辛うじて命を保っているような極限状態です。

オルミ監督は「これは戦争映画ではなく、兵士たちの恐れや痛みを描いた作品だ」と言っています。激しい敵の砲撃は映画の後半で一回描かれるくらいで、後は夜空に打ち上げられる敵の照明弾や、司令部からの電話による無謀な指示命令、精神のバランスを崩していく兵士の行動などから、極度の緊張感と恐怖感がひしひしと伝わってきます。大それた手柄を立てるヒーローなど不在ですし、不必要に涙を誘う作品でもありません。

実際に手を汚す者、苦しむ者は、いつの世も現場の人間、末端の人間であることを思い知らされ、人の命の尊さを考えさせられるものとなっています。

緑はよみがえる.JPG


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