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読書より:家族とは何か

2016年04月07日

クロネコヤマトで届けられた次の本を読みました。

森 健 著『小倉昌男 祈りと経営 : ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』(2016)小学館

普段経済界のことにはとんと興味が持てないのですが、書評を読むうち無性に読みたくなりました。これが面白かった。ぐいぐい引き込まれて推理小説を読んでいるような感覚になり、でも決してエンターテイメントなどではなく、いつの間にか自分が真摯な態度で向きあっていることに気付かされるような作品でした。

数々の規制と闘いながら宅急便という物流システムを作り上げた伝説の名経営者が、晩年ほとんどの私財を抛って福祉財団を築き、「障害者が月10万円稼ぐことが出来るように」という、福祉に経営理念を取り入れたシステム作りに奔走しました。それまで福祉などに興味の無かった人が、そこまでした動機は一体何だったのか?丹念な取材をもとに解き明かされていくのです。

興味のある方は読んでいただくとして、私が手に取った理由は、そこに「家族の存在」それも「家族の修羅」が関係しているからだということが書評から分かったからであり、こういう経営者の人って少なくないなと日頃感じていたからでした。

ただ読み終わって、多少なりとも家族力動や家族療法を学んでいる臨床家から見たら、この名経営者の動機や家族について、ジャーナリストである森氏とはやや異なる見解をするだろうと思われました。すなわち、家族のなかの特定の誰かの病気のせいにはしない、ということです。

私は(故)小倉昌男氏の存在を知らなかったのですが、本書で描出されているこの方と、社会的業績の大小や有無に関わらず、世にいる大勢の父親の姿が重なるところがあるように思いました。

配偶者や子ども、親といった家族の問題で悩む人、悩んだことのある人には、多いに参考になるというか、色々考えさせられる本だと思います。

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