社会的ひきこもり(引きこもり)について

現在約70万人と推測される社会的ひきこもり(引きこもり)ですが、あくまで推計でありその実態はつかめません。社会的ひきこもりとは「さしたる重篤な精神疾患が認められないのに、社会参加をしたくてもできない人たち」という状態像を表す言葉であって、病名ではありません。日本ではひきこもりとニートは同じ意味で使われることが多いのですが、元々ニートとは不況下のイギリスの経済用語であって「NEET : Not in Education, Employment or Training:学業、雇用、もしくは就業のためのトレーニングに従事していない若者(16-18歳)」のことであり、その出自や状態像はかなり異なります。

元来「社会的ひきこもり(social withdrawal)」とは統合失調症や重度のうつ病の症状の1つでしたが、そういった重い精神疾患が認められないのに「気力がわかず学校や会社に行けない」若者が1970年代頃から徐々に見られるようになり、スチューデントアパシー(アパシーとは無気力のこと)やアパシーシンドローム(無気力症候群)、または(部分的)退却神経症と言われ問題とされてきました。

やがて年を追うごとに「社会参加をしたくてもできない、対人関係を求めているのに築くことができない」という葛藤を抱えた人々がその数を増していき、次第に「社会的ひきこもり」という言葉が今のように独立して使われるようになったのです。ひきこもりの人は昼夜逆転の生活をおくる場合が多く、対人関係から孤立し、医療や治療の場に表れることもほとんどなく、非常に強い葛藤を抱えながら日常を送っています。社会的ひきこもりの背後には、対人恐怖、社会不安障害(社会恐怖)、回避性パーソナリティ障害などの疾患がみられ、特に本人の葛藤が強いと対人恐怖傾向が高いと言われています。ひきこもりからの回復目標は、まずは就労や就学などではなく、家族以外の対人関係を少しずつゆっくりと築いていくことが何より大切であると私は考えています。問題を放置しておくと、ケースによってはひきこもり期間が長期化し、対象年齢が30-40代、50代と中・高年齢に達してしまいます。

「対人恐怖の症状」

対人恐怖についてはアメリカの診断基準であるDSM-4TRでは扱われていません。対人恐怖は日本や韓国など儒教の影響の強い国で報告されるものであり、欧米ではあまり見られないとされてきました(近年は異説あり)。また社会的ひきこもり(引きこもり)も欧米ではほとんど見られないとされていますが、若者のホームレスが日本より圧倒的に多いことを考えると、家にこもるか路上で生活するかの違い、つまりは社会文化的背景の違いが関係していると言えるかもしれません。
対人恐怖の症状は次のようになります。

①社会的状況で自分の態度、行為、あるいは身体的特徴が、申し訳なく、迷惑をかけていると思う。
②社会的状況で、恥辱、困惑、不安、恐怖、おびえ、緊張などを感じる。
③上記2つの症状のために、他者が自分を受け入れない、軽蔑する、避けると悩む。
④苦痛を感じる社会的状況を回避しようとするが、同時に回避することを悩む。

社会恐怖の症状は以下になります。

「社会不安障害(社会恐怖)の症状」

①よく知らない人たちの前で、他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況、または行為をするという状況に対する顕著で持続的な恐怖。その人は自分が恥をかかされたり、恥ずかしい思いをしたりするような形で行動することを恐れる。
②恐怖している社会的状況において、ほとんど必ず不安反応が誘発され、パニック発作を起こすこともある。
③その人は恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している。
④そのような状況を回避するか、そうでなければ強い不安や苦痛を感じながら耐えている。
⑤社会的活動が障害されており、著しい苦痛を感じている。
⑥その恐怖と回避は、他の疾患ではうまく説明できない。

社会不安障害(社会恐怖)と対人恐怖はよく似ていますが、対人恐怖には「自分は迷惑な存在であり、ごめんなさい」という気持ちがあることが大きく異なります。社会不安障害(社会恐怖)はパフォーマンスに対する恐怖であり、対人恐怖は関係に対する恐怖であって自己愛の問題が絡むと言われています。「他人が自分を受け入れてくれない」という問題の他に、「自分が自分を受け入れられない」という切実な問題を含むのです。

対人恐怖、社会不安障害(社会恐怖)、強迫性障害などの治療には、森田療法、認知行動療法、精神分析的精神療法などが有効であると言われています。また、ご家族に社会的ひきこもり(引きこもり)の方がいてご本人が治療に繋がらない場合は、家族成員のどなたかが治療を受けることで家族療法が有効になります。ご家族のどなたかが治療に繋がり、その方の考え方や行動に変化が生じると、おのずとひきこもり問題が変化していきます。神保町カウンセリングルームでは有効な家族療法を提供しております。お一人で抱え込まず、カウンセラー(セラピスト)に今のお気持ちをご相談ください。


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