2021年11月04日
ブログ更新が等閑になっていました。コロナが落ち着いてきたので気持ちが軽くなり、少しずつですが出掛けたり人に会えるようになってきましたね。
それでも12月末から第6波到来と報じられており、何だかうちのメダカの様な気分になってきました。今のうちに水槽の上の方に上がって空気をぱくぱく吸い、餌を食べ、英気を養ってコロナ再到来に備えておきたいと思います。
さて、今日は興味深いニュースを読んだのでシェアします。
体の痛みについて、組織や神経の損傷などが無く生じるものを「痛覚変調性疼痛」と名付けられたというものです。痛覚変調性疼痛には、心理臨床においてもお馴染みの過敏性腸症候群や線維筋痛症、腰や骨盤、膀胱の痛みなどが主にあげられます。また、睡眠障害も併発しやすいとのことですが、痛みがあれば睡眠に支障をきたすのも想像に難くないですよね。
今までは「心因性」「心の問題」と扱われてきた痛みが、実は「脳の神経回路の変化」によるものと最近の研究で分かってきたそうです。
具体的にどこの神経回路が影響しているかがわかれば、薬の開発も期待できるとのことでした。では、この脳の変化を引き起こすのは一体何なのか。それはストレスや心理的影響とのことでした。
何だか頭が混乱してきますね。「心の問題→体の痛み」と思われていたものが、「心の問題→脳の神経回路の変化→体の痛み」であると判明した、ということなのでしょう。なんだ、結局は心理的問題じゃない、ということになって堂々巡りになりそうですが…。
生命ある限りゼロにはならないストレスや心理的影響とどうやって上手く付き合っていくのか。正に大事なのはここですよね。精神医療では薬で脳に働きかけて治し、一方、心理臨床では薬ではなく、心理療法や生活改善、環境改善などで対応していく。どちらのアプローチも欠かせないだろうと、考えさせられた記事でした。
秋
2021年10月06日
緊急事態宣言が解除され、街が徐々に解放的になっていくのが感じられますね。
面接もほぼ対面に戻りつつあるものの、時々オンラインがあるとなぜか少しほっとします。オンラインは時間が来て接続を切ればそこで終わるので、時間の余裕が生まれるからなのでしょうか…。どうもそれだけではないようで、この感覚は一体なんなのだろうと思っていた矢先、精神科医の斎藤環先生の論考や記事に出会いました。
私が感じていたことに合点がいきました。それは「臨場性は暴力である」ということで、人と人が身体をもって直接相対することは、それだけで暴力性を帯びるということだったように思います。暴力といっても単純な意味での物理的精神的な暴力ではなくて、たとえどんなに優しい関係であったとしても、そこには「他者に対する力の行使」「不可避の侵襲」が生じるということでした。
この臨場性の暴力は善悪で語れるものではなくて、人々の欲望を賦活し、関係性を育むのだと言います。コミュニケーション(情報の伝達)はオンラインで可能ですが、関係性の構築はオンラインでは不可能なので、コロナ後の世界は全てがオンラインになることもないし、また全てがリアルな対面に戻ることもないのです。
先週末は海外の先生とオンライン研修がありました。講師のジェットラグも渡航滞在費も無く、また参加者も研修費のみで全国から参加できる利点があり、これならばオンラインで十分なのではないかと改めて思いました。とはいえ深い学びができるのかというと私はそうでもないようで、これからの社会はオン・オフライン併存、柔軟に選択できるようになるといいですよね。
2021年09月04日
明日はパラリンピックの閉会式です。東京の交通もまた通常のように戻るのでしょう。オリンピック、パラリンピック期間は、駅やホームに警察官が沢山いましたね。2-3メートル間隔で見かけたので、安心な面と却って物騒な感じがして、今が通常時ではないのだと度々気付かされました。
オリンピックは観なかったのですが、今回パラリンピックはよく目が行くようになりました。伴走者やアシスタントと組んで参加する競技や障碍の種類や等級に応じてルールに様々な工夫が施されたりする競技など、その仕組みに感心、感歎するところが多々あって引き付けられました。パラリンピックが対象とする障碍は肢体不自由(欠損、麻痺)、脳性麻痺、視覚障碍、知的障碍とのことでしたが、皆さん、御存知でしたか?私はそれさえも知らずにいました。
身体障碍者の人のなかには、「パラが “たとえ障碍があっても前向きに努力すれば打ち勝てる” というメッセージになるとすれば、とても生き辛い」と感じる人が少なからずいるようです。確かにそうですね。障碍に限らず、「困難があっても必ずそれを乗り越えられる、あなた次第なのだ」という価値観が社会に溢れれば、それは励ましではなく、大きな重荷になるでしょう。
障碍や困難があってもどうにか生きていける、自分のペースでスポーツやゲームを楽しむことができる、生活を楽しむ余地がある、人は支え合って生きていける、そんなに過剰に頑張らなくてもいいほどほどの社会になっていくように、次期選挙の一票を投じたいなと思いました。
2021年08月12日
毎日毎日、マスクも手伝って非常に暑いです。こう蒸し暑いとイライラしたり、動くのも億劫になったり、頭もボ~っとしがちですね。そんな不快な時季の過ごし方として、一ついいものを見つけました。それは、これ↓
エクササイズをしたり、書き込んだりするワークブックです。セルフ・コンパッションとは、自分自身へ向ける優しさ、思いやり、理解といったものです。24章からなっているので、一日1-2章ずつ進めてみると、ひと夏に程よい分量の宿題をやったような気分になると思います。各1章が平明なので、またワークブックの趣旨からして優しく素直な気持ちになることができます。私もまだ第4章のところですが、心理的物理的な負担が少ないです。
このところよく考えるのが、仏教でいわれる「慈悲」という言葉、態度についてです。お盆も近いので尚更考えますが、このワークブックのなかにも慈悲(バーリ語でmetta,「友愛」の意も)が取り上げられています。慈悲とは「すべての人間が幸せでありますように、という願い」なのだそうです。
慈悲は上から目線の同情などではなく、友愛という意味からも、私とあなたが同じ地平に存在し互いの幸せを願うという、何か横に広がっていくものをイメージさせます。
2021年08月04日
東京は猛暑と感染爆発ともいえる状態が続いています。首都圏はほぼ90%を感染力の強いデルタ株が占めているようです。私は既にワクチンを2回摂取していますが、なかにはまだ未接種の方も多くいらっしゃいます。また、ワクチンは3回必要ではないかという説も流れてきています。そこで…。
現在、暑いなか来室される方々に冷たいお茶をお出ししていますが、必要な方には待合のところでセッション前にお出しすることにしますね。セッション中はマスク着用でお願い致します。
何だか味気のない、細かいことですが、極力お互いが感染させてしまうリスクを回避し、対面形式でのセッション維持に努めたいと願っています。同時に、不安な方はオンライン形式でのセッションも行っています。但しこちらは対面でのセッションを何回か経験されている方のみに限定させていただきます。
あともうひとふんばり(だといいのですが…)、一緒に乗り越えて行きましょう。
ニョロニョロ、capsule toy
2021年07月17日
東京は昨日梅雨明けし猛暑到来となりました。同時にデルタ株も猛威を振るいはじめ再び緊急事態宣言下となっています。面接中は引き続きマスク着用でお話しいただくようお願い申し上げます。
さて、今日は一般向け書、マリー=フランス・イルゴイエンヌ著『モラル・ハラスメント』(1998)を御紹介します。これもクランアントさんから教わったものなのですが、20年以上前のものでありながら事例がたくさん載っていて今の時代にも色褪せることのない本となっています。著者によるとモラル・ハラスメントは言葉や態度による精神的な暴力です。
DV、パワハラ、セクハラ、いじめなどのなかにもモラル・ハラスメント(モラハラ)は含まれていると思いますが、この暴力のニュアンスを理解することは大事だと思いました。今はモラハラという言葉も随分定着してきていますよね。ただどこか軽いイメージで捉えられているような気がしますが…。
カップルの問題のなかにはこのモラハラ(精神的暴力)がかなり見られると思います。明らかな暴力・暴言でないと、なかなか自分がモラハラをしている、或いはモラハラを受けているとは気が付かない人がかなり多いのですが、舌打ちする、聞こえているのに無視をする、厭味ったらしく溜息をつく、バカ扱いをする、説教をするetc、などはれっきとしたハラスメントなのです。
もうそろそろ、“関係性の有無”ではなく、“関係性の質“が問われる社会になってほしいと願っています。
2021年06月20日
この夏は3回ほどの「東アジアの臨床」ワークショップに参加しています。初回は中国、今日は韓国、次回は台湾の心理臨床を学べる貴重な機会になっています。年々アジア圏出身でカウンセリング御希望の方は増えているように思います。
今日は韓国の先生の発表でしたが、いじめについての2つの言葉を知りました。何となく聞き覚えはありましたが、韓国では「公然としたいじめ」のことをワンタといい、「隠れたいじめ」のことのウンタというとのことでした。韓流ファンの人たちはワンタについて聞いたことがあるのではないでしょうか。アイドルグループや軍隊などの集団のなかでしばしばトピックになりますよね。
ウンタについては、陰湿ないじめのことを指すと誤解されている向きもありますが、そうではなくて「隠れたいじめ」だそうです。「誰かをムシする、目を合わせない、輪に入れない」などの陰湿ないじめでも、外から見てあっ、ムシしている等とわかるものはワンタなのです。一方ウンタは、外からは仲が良さように見えたり問題が無いように見えるそうです。こちらの方がずっと怖いですよね。
「隠れたいじめ」は日本にも見られることではないでしょうか。学校や会社のなかでも、一見するとファミリーのように仲良さそうに見える組織のなかに、実は誰かが辛い思いや傷ついた体験をしていることはしばしば耳にします。私たち大人は、賢く冷静に物事を見る目を失わないでいたいものです。