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ブログ 心's LOOM

脳、心、体

2016年11月27日

もうすぐ12月になりますね。
白山通りの銀杏並木伐採の話ですが、どうやら根っこの問題ではなく、東京オリンピック絡みで道路が拡幅されるためらしいとの噂を耳にしました。季節の移ろいと時間の流れと共に、街の景色は変わっていくのですね。それにしても、東京オリンピックの後のことを真剣に考えている人たちは一体どれくらいいるのでしょうか…。

さて、最近好んで学んでいるセラピーでは、「体」というものをとても重視しています。たとえば「それ(感情や感覚、違和感や体の痛みなど)を体のどこで感じますか?」という質問が多かったり、体の違和感から感情や心的外傷を探っていったり。「心の問題なのに、なぜ体なの?」と思われる人が多いかと思います。

感情はまず体に表れて、後から言葉(理性脳、左脳)で‘怖い’や‘悲しい’などと意味付けするからなのですが、自分の体の状態や感覚などに気づくことの重要性を説明している記述を見つけたのでここに引用したいと思います。

「心的外傷後の反応を変えたいなら情動脳(大脳辺縁系、扁桃体といった右脳)にアクセスして、「辺縁系セラピー」をしなければならない。…情動脳に意識的にアクセスできる唯一の方法は、自己認識を通してであることを示した。つまり、自分の内部で何が起こっているかに気づいて、自分が感じているものを感じることを可能にする脳領域である内側前頭前皮質を活性化するのだ。」(ベッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する-脳・心・体のつながりと回復のための手法』(2016,紀伊國屋書店)第13章より)

下線は後から付けました。ちょっと同語反復的で難しい記述かもしれませんが、最近の神経科学の発達によって脳と心と体の繋がりが解明されてきているのですね。したがって自分の身体的感覚を自覚していくことが、情動脳の過活動を抑え、自己の主体性を育てていくことに繋がっていくのです。

lakeside


銀杏並木

2016年11月23日

明朝は雪の情報が出ていますね。都心でも2cmの積雪があるとか、一刻も早く雨で溶けてくれることを祈るばかりです。雪景色は綺麗で好きなのですけれど…

今日は水道橋方面から歩いてオフィスへ来ました。着いて鞄を覗くと、ひらりと1枚。銀杏の葉が中に入っていました。風に運ばれてきたんですね。この白山通りの銀杏の樹ですが、確か12月から伐採が始まります。大きくなりすぎて根が道路を変形させているからのようです。今年で見納めかと思うと寂しくなりますね。

銀杏一葉

銀杏一葉

神田カトリック教会

神田カトリック教会

 

 

 


人は社会的な動物である

2016年11月13日

今読んでいる文献から派生したお話…。

ベッセル・ヴァン・デア・コーク著『身体はトラウマを記録する-脳・心・体のつながりと回復のための手法』(2016,紀伊國屋書店)というもので、ヴァン・デア・コーク先生はトラウマ研究の第一人者なのですが、この著書の表紙絵(昨日のブログphoto)どこかで見たことがあるなと思っていました。

それもそのはず、アンリ・マティスのJazzシリーズの一枚『イカロス』でした。イカロスはギリシャ神話に出てくる登場人物で、蝋で固めた翼を付けて空を飛翔しますが、太陽の熱で蝋が溶け、海に墜落して命を落としてしまう男の子の話でしたね(但し諸説あり)。今ではテクノロジーや人間の傲慢さを戒める神話として有名です。

コーク先生の著書の原題は『THE BODY KEEPS THE SCORE』Brain,Mind,and Body in the Healing of Trauma(2014)

今日、トラウマ(心的外傷)は精神に影響を及ぼすだけでなく、脳や体にも重篤な影響を与えることがわかっています。そして何をトラウマとするかは単回の大事件や大事故だけでなく、「発達性トラウマ」という幼少期からの生育の段階で受けるトラウマや「親子関係の性質」に目を向けて、脳や心や体にアプローチする色々な治療法を研究・実践していく必要性をこの本のなかで繰り返し説いていました。

ところで、この本の制作者はなぜ『イカロス』を使ったのか?人は社会的な動物であるのに、そのことを軽視して精密医療化している最新の精神医療に対する警鐘なのか。それともイカロスの羽はbodyの一部であり、bodyの損傷ということは彼がトラウマを負っていたことを暗に示したかったのか…。何となくなのか…(笑)。

ブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』を読むと、子どものイカロスの話というより、その父ダイダロスの話になっています。ダイダロスは並外れて優秀な細工師で、幽閉されていた迷宮から逃げ出すために息子と自分の分の羽を作り本人は助かりました。ダイダロスは優秀だけれど嫉妬心から甥を殺めてしまうほどの激しい心性の人物として書かれているので、父ダイダロスと無邪気な息子イカロスの関係ももしかしたら複雑なものだったのかもしれません。

燃え

燃え

 

 


今日の締め…

2016年11月12日

マインドフルネスと読書と甘いものと…

お茶の時間

お茶の時間


行く末

2016年11月09日

寒くなってきましたね。東京都心では木枯らし1号だとか、背中を丸めて歩いてしまいます。

昨夜はある心理療法の電話コンサルテーション会議があり、さすがに午前様になってしまうので近所のビジネスホテルに泊まりました。ひさ~しぶりにテレビを観たり、朝ご飯(凄い質素でびっくり。このホテルはもっとマシなはずでしたが…笑)も人が作ってくれるので、楽~な気持ちの良い朝を迎えることが出来ました。暖かいベッドと温かい食事があるのはありがたいことです。

さてホテルではBSで米の選挙報道を観て、オフィスに着いてからはPBS(米国公共放送)を聞きながら、目は朝日新聞サイトの大統領選挙開票速報を追っています。お昼の段階では接戦で目が離せないのですが、新聞サイトは各州毎にどちらが勝ったかを、州の紹介を少し載せながら報道してくれるので、なかなか面白いのです。この州は共和党が強いとか、こちらの州で例の事件が起きたなど、州の場所は分からなくても勉強になります。

そうこうするうちに、なんだか情勢は酷いことになってきました。障害者の真似を公衆の面前で派手にやって後から下手な言い訳をしたり、差別主義で排他的な人物が大統領になったら一体どういうことになるのでしょうか…。

九段下界隈

九段下界隈


Necessity is the mother of invention.

2016年11月02日

必要は発明の母、という諺を英語で表すと上記のようになるようです。そのままですが、日本の諺ではないのでしょうね。

必要は達成の母、というのが目下のところ実感です。

私事で恐縮ですが夏頃から必要に迫られて長距離運転をしなくてはいけなくなりました。元々運転恐怖症で運動神経もないのに、あるものといえば「必要性」と「代替不可能性」だけ。

最初の頃、運転中は恐怖感と緊張感、運転後4-5日間は全身筋肉痛と虚脱感でボロボロでしたが、今は100キロぐらいは途中休憩を入れずに運転できるようになりました。今でも怖いものは怖いのですが…。

そういえば…、好きな諺はといえば「火事場の馬鹿力」「窮鼠、猫を噛む」など(笑)。「自力」だけではなく「他力本願」もいいですねぇ。

「必要に迫られる」というのは、人を動かすということ学びました。ということは、迫られないと動けないのが人間なのかもしれません。そうではない人も勿論いらっしゃいますが。

とはいえ一方で、色々な人の支えを借りていることも忘れてはなりませんね。

美しい赤い樹

美しい赤い樹

 


父と娘の関係2

2016年10月22日

~続き~「契約、知 vs.愛」がテーマの『ニーベルングの指環:ワルキューレ』より

前にも述べたように、ワルキューレ(複ワルキューレン)とは9人の女戦士のことで、長女の名がブリュンヒルデ。槍と盾を身に付け、雄叫びを上げて登場する勇ましい戦乙女なのですが、まあ現代ならナウシカやもののけ姫あたりでしょうか…。

主神ヴォータンと知恵の女神の子どもであるブリュンヒルデは、9人姉妹のなかで最も聡明で勇敢なワルキューレであり、それゆえ父の寵愛と期待を一身に受け、また父の命令に忠実なのです。

では女戦士とは一体どんな役目を負わされているのでしょうか。彼女たちは父の命令によって、将来の戦に備えて人間界の戦死者の中から優れた兵士を集め父の居城ヴァルハルに連れて行くのが仕事です。

ヴォータンは元々、黄金の指環(これを手に入れた者は世界を統治する権力を得る)を地底族から騙し取った経緯があり、その地底族からの反撃を怖れて兵士を集めています。契約の神であるヴォータン(契約の神なのに!)はじめ様々な種族の者たちが、権力に取り憑かれて殺戮や強奪をしたり策謀したりしているのです。

ヴォータンが愛娘ブリュンヒルデに、ある人物(ジークムント、実はヴォータンと人間との間の息子)をヴァルハルに兵士として連れて来いと命じます。ところがジークムントは愛する人も一緒に行けないのならば自分は行かないと申し出を拒みます。神の下で働けるという名誉を捨てて、ジークムントは愛を選んだのです。それでも押すブリュンヒルデにジークムントは「あなたは強くて優秀だが、心は冷酷な人だ」と言い放ちます。こういったジークムントの行為はブリュンヒルデを強く揺さぶります。

彼女は今まで父に従い男性原理で生きてきた人なのですが、ここで世界観の変容が起きます。権力よりも愛を第一義に貫く男性を前にして、父親の命令に背くことを選びます。そして父の情け容赦ない怒りを買い、残る姉妹8人に助けを求めても得られずに(姉妹は父を怖れて姉を助けられないのですね)、父の厳罰を受けることになります。

物語には色々な登場人物のもっと複雑な心理があるのですが、まあ大体の筋は以上のようなものです。

主神ヴォータンを「父」や「契約や知を重んじる男性原理主導の社会」とするならば、こういった優勢な支配に盲目的に従う姉妹8人というのは、現代の私たちとは無縁の他人事ではありません。ブリュンヒルデの生き方は、自分で物事を見て考え、自由な意思で行動・選択するという大切な一つの示唆を与えていると思いますが、さて、私たち女性はそれができているのでしょうか…。

オペラのムックでは「ブリュンヒルデは未来の女性像だ」と書かれていましたが、この後の作品「ジークフリート」「神々の黄昏」で更に大きく登場することになります。

トルコ桔梗

 


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