1. 心理 東京
  2. ブログ 心's LOOM

ブログ 心's LOOM

惻隠の情

2012年12月03日

今日は辞書を片手に…。
ねこ砂の掃除に古新聞を使っているので、時折古い記事に目がとまることがあります。およそ一年前の記事に、ある数学者が書いた「これからの日本のあり方」のようなものがありました。

それを読んで初めて知ったのが、「惻隠(そくいん)の情」という言葉。
3.11以後、忍耐、譲り合い、思いやり、支援やボランティア精神など、惻隠の情で日本中が満たされた、と著者は言っていました。

「惻隠」とは、漢和辞典を引いてみたら、「①いたむ。かわいそうに思う。悲しむ。②真心を尽くすさま」。
もう少し詳しい辞典を調べてみると、「惻(いたむ)」の解字(忄と貝と刂から成り立っていますね)は、「食器(貝)のそばに刀(刂)をくっつけて置いたさま。心にひしひしとくっついて離れないこと」とありました。食器の傍らに刀を置く、ということは何を意味するのでしょうかね…。すぐに出陣、ということでしょうか。惻隠は、同情とも憐憫ともニュアンスが違うように思いました。

そしてその数学者曰く、今後の教育について、「英語教育とIT(情報技術)教育を小さいときから身につけなければ国際競争に負ける、というのは間違っている。効率重視の経済偏重主義は格差社会を生み、国語教育(読書も含む)に力を入れなければ、国際社会の多様性は失われ、歴史から学んだり大局的なものの見方ができなくなり、もののあはれや情緒を解することができなくなっていくだろう」ということでした。これには同感で、その国の言語や国語教育が貧しくなれば文化や人心が色褪せ、多様性という豊かさが失われていくのだろうと思いました。

*******

ブルームーンのサムネイル画像









2012年11月29日

日々冷え込んできました。
年末商戦の前哨戦なのか、隣の文具店では屋外での大売り出しが始まっており、店員さんの掛け声やらくじ引きの鈴の音やらで少々うるさくなっています。

空気が益々澄んでくると、光や音などの刺激がくっきり鮮明になります。
毎日帰宅するときの星空や月がとてもきれいだし、未明も、どこか遠くのお寺の鐘音がよく聞こえてきます。朝6時に鳴るのですが、これが6つ鳴るのか幾つ鳴るのか、うつらうつらしていつも行方を追えなくなります。

クリスマスやお正月の年末の雰囲気が苦手な方も少なからずいると思いますが、私もある部分においては醒めている。そのかわり、冬至に向かっていく、この時期の澄んだ空気を楽しんでいます。

RIMG1877 (3).JPG
↑ 3本に分かれた杉の木。三位一体(Trinity)にあらず?なにしろ神社にある木なので。



黄色い星

2012年11月24日

外気が大分寒くなってきましたね。温かいものが美味しい季節となりました。
たまにはちゃんとしたものをと思い(映画の話)、昨夜は『黄色い星の子どもたち』(2010仏)という作品を観ました。原題は『 La Rafle 』、英語だと「 The Round Up」 で、「一斉検挙」の意。いつも思うのですが、洋画の原題は直截(せつ)的です。日本の題名の方が情感がありますね。

この映画は、1942年7月にナチスとフランス政府によって、パリに暮らすユダヤ人1万3000人が一斉に検挙されたヴェル・ディヴ(冬季競輪場)事件について扱っています。男性だけでなく、女性や子ども、赤ん坊までが一度冬季競輪場に収容され、最終的にはポーランドの絶滅収容所へ送られてしまいます。

黄色い星、というのはユダヤの星のこと。
1942年6月より、6歳以上のユダヤ人は、黄色の星を衣装に付けることを義務づけられます。

ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)事件というのは、1995年に初めてこの事件に対するフランス政府の関与をシラク政権が認めたとのことでした。それまではナチスだけの仕業にされていたのですね。

こういう話は「過去の出来事」なのではなく、形を変えて繰り返されていくことが非常に恐いことなのだと思います。犠牲者が加害者に、加害者が犠牲者に、くるくると役割を変えながら。映画のなかでは迫害に荷担するフランス市民たちがいれば、身を投げうって動く善良なフランス市民もいる。そうではあるけれど、犠牲になった人たちの魂はいつか救われるのだろうか…、と重い気持ちになりました。


野菊




ナイトミュージアム

2012年11月18日

月曜が休日だとどこも美術館が開いておらず、思い切って夜間開いている美術館へ行ってきました。乃木坂の国立新美術館へ。初めて行きましたが、千代田線乃木坂駅から直通で美術館入り口へ行くことができて便利、なかなかきれいなところでした。金曜のみPM8時まで開館です。

しかし、夜間ってこんなに混んでいるのですね。てっきり空き空きの館内を存分に堪能できるのかと予想していたら期待外れ。東京はやはりどこへ行っても人だらけ…。

観てきたのは「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」。副題は「ようこそ、我が宮殿へ」。
副題通りに、ヨーロッパの城館の一部屋のように、バッロク時代の華麗でドラマティックな絵画、彫刻、家具調度品が見事に配置されていました。人混みであまりゆっくり観られませんでしたが…。

そんななかいいなあと思ったのは、やはりブリューゲル一家の作品群。絵画の正しい?鑑賞の仕方を知りませんが、とにかく細かいのが好きなので魅力的なのです。点のように描かれた人々は一体何をしているのか?農村の生活様式はどんななのか?飛んでいる鳥たちは?犬は?等々。

下のポストカードは、ブリューゲル長男によるブリューゲル父の作品の模写。お題は『ベツレヘムの人口調査』。クリスマスも間もなくですが、このなかに聖母マリアと夫のヨゼフがいます。さて、どこでしょう?

絵画展










鳥瞰

2012年11月16日

時々思うのが、空を飛べたらな〜ということ。
宮崎駿の作品や近年はアバターを観ていて、いいな…、あんな風に空を飛べたら、さぞや人生観が違ってくるだろうと溜息を漏らしていました。

そして先日観たのが、BBC EARTH 2012スペシャル「アースフライト 大空の冒険者たち」の第5回。6回シリーズで、最終回は12月にあります。(最近お騒がせのBBCですが、ネイチャーものは目を見張るものが多いですね。)

http://www.wowow.co.jp/documentary/wnd/earth/index.html

wowow 放送なので見られない方もいると思いますが、上記サイトから短編ではありますが動画を見ることができます。これが本当に美しくて素晴らしい。

冒険者といっても人間ではありません。鳥、です。

鳥の目線で、鳥になった気分で、世界各地の街並みや厳しい大自然を見ることができるのです。毎年何千キロと空を飛ぶ渡り鳥や、世界遺産より高く飛翔する鳥たち、上昇気流に乗って滑空する鳥など、鳥類たちこそ生物のなかで一番自由なのかもしれないと思えてきます。

鳥を気持ち悪いと思われる人もいるかもしれませんが(かつてそうだったので理解はできるし、なんといっても恐竜の子孫と言われていますしね)、時に鳥の目で物事を捉えてみると、気持ちが晴れ晴れするかもしれません。

どんぐり



だらだらと…

2012年11月13日

明日から寒くなるのだとか、うかうかしていたら立冬を過ぎていました。本格的な冬到来の前に、紅葉の写真を一枚。

not TATSUTAYAMA

つい先日懸案事項が済み、ここ数日は実にゆるゆるな生活を送っています。動物ものドキュメンタリーや映画ばかり観ています。直近で観たのは、「猿の惑星:創世記」と「スクリーム4」。
「猿の惑星」は圧巻でした。ゴールデンゲートブリッジ上での猿たちと人間との戦いは壮絶にして壮観。

単なる娯楽作品ですが、もしも人間に銃というものがなかったら、私たちはゴリラ・チンパンジー・オラウータンetc. に叶わないかもしれません。この映画は動物実験の対象になっている霊長類たちが、リーダーチンパンに率いられ蜂起する、という内容でした。
人間よ、おごるなかれ、ですね。


*******
森田療法の他のお奨めの本があったら、という声が幾つかありましたので、以下のものを掲げておきますね。シリーズものは言葉遣いが古く難解ですので、こちらだと読みやすいと思います。










秋の夜長に…

2012年11月06日

久しぶりに夜の映画館へ出かけました。
出演俳優が好きというミーハー気分で出かけ、お腹も空いていたのでポップコーンの大サイズを買ったものの、口の中で溶かしながら食べるはめになった作品でした。まあ、内容は知っていたのですが…。

その名も『危険なメソッド( A Dangerous Method )』。
ほとんどの精神療法の祖ジクムント・フロイトと分析心理学の祖カール・グスタフ・ユング、そしてユングの患者にして後に精神分析家になったロシア人女性、ザビーナ・シュピールラインの人間模様を描いた、大変面白い映画でした。ザビーナ役キーラ・ナイトレイのいびつな?演技にはびっくりしましたが。

全て史実に基づいているのかはわかりませんが、背景の詳細が面白かった。大変マイナーな話題だとは思いますが、ユングの働いている病院の院長はオイゲン・ブロイラー(多分)であろうし、フロイトの古今東西の土着的な置物などで飾られた診察室も見事に復元されたかのようでした。etc.etc.

師匠(フロイト、ユダヤ人)と弟子(ユング、アーリア人)の出会いと訣別までの流れ、偉大なる父を失った後のユングの憔悴しきった様子、ユングとザピーナの関係(その間に入るフロイト)などは、私たち普通の親子関係や師弟関係に普遍的にみられるものでしょう。

しかし…、ユングは職業柄絶対にしてはいけない倫理を犯すばかりか、配慮の欠けた大食いとして描かれている。ザッハトルテを頬張り、フロイト宅での夕食時には肉を多量に自分の皿にとり、他の人のことを一向に考えない。フロイトは子だくさんの普通の一家(ブルジョワではあるけれど)、ユングはお金持ちの妻を娶った関係でかなりの富裕層。この作品からは、ユングには見えていないものが沢山あったように思われました。

橋








このページの先頭へ